前回ご報告したNextPublishingですが、さらに今週から、取次経由の一般書店向け委託販売を開始することになりました。
NextPublishingでは電子書籍とPOD書籍(紙書籍)をハイブリッドで販売していますが、今回はそれに加え、従来からの出版方法(伝統的出版)でも販売できるようになったということです。現在、ほとんどの出版社は、伝統的出版方法で書店向け販売をし、その後に電子書籍にしていますが、NextPublishingではそれを逆転させて、電子書籍でスタートし、次に伝統的出版方法に発展させました。つまり、「デジタルファースト」です。
この試みは、電子出版と伝統的出版を統合する画期的な出版方法だと思っているのですが、その意味と効能を理解していただくには、少し説明の必要があることでしょう。
従来からの本の販売方法についてはご存じの方も多いと思いますが、念のためおさらいしておきます。
・取次流通
出版業界の問屋である取次社に依頼して、全国書店に出荷してもらうこと。
・委託
大量製造した書籍を取次流通で全国書店に配本(プッシュ)し、書店で陳列・販売してもらうこと。全国と言ってもすべての書店ではなく、配本店は配本部数によって決められる。
・返品
委託の場合は、書店は配本された本が売れなかった場合は返品してもいい。この制度により、書店はリスクなく製品を仕入れて陳列することができるが、反面、出版社は返品リクスを抱えることになる。
・再販価格維持制度
出版製品に法律的に許されている定価販売制度のこと。この制度のおかげで、本は日本全国どこでも同じ値段で買える。従来の本のほとんどはこの方式だったが、電子書籍やPOD書籍はそうではなく、世の中の本以外の商品と同様に販売店が自由に値決めできる商品である(非再販価格維持商品)。この違いにより、POD版と取次版では実際の購入価格が異なることになる。
・オフセット印刷
従来から利用されている書籍の印刷方式で、たくさん印刷すればするほど、一冊単価が下がっていく。ちなみにPODは、原理的には一部でも大部数でも一冊単価は同じである。
上記をふまえると、今回の電子出版流通と取次書店流通の統合の効能が分かってきます。
従来の書籍出版はオフセット印刷しかなかったので、最初から大量生産して、委託による大量流通をしていたわけですが、そのマイナス面として、売れなかった場合は返品により大きなリスクが発生します。PODが登場した今は、トータルコストが安くスピーディーな出版が可能になったので、デジタルファーストのほうが理にかなっています。
またその効能として、売上額が読めない企画でも製品化することが可能になり、新人著者や専門性の高いテーマでも企画どりが柔軟にできます。そして、電子出版で成績のいいものについては、伝統的出版による販売も併用することができ、売上拡大が期待できます。
紙書籍という意味では、取次版はPOD版と同様で、実際に中身は同じものです。ただし、流通方式が異なるので、それに合わせて取次版はPOD版とは別の製品として設計されています。具体的にはISBNコードが違いますし、価格も異なります。
今回は、先行した電子書籍(とPOD書籍)の販売実績で成績のいいタイトルに限り取次版を製品化するので、売れない本を大量に市場に出してしまうリスクが軽減できます。電子出版側から見れば、電子出版で可能性が確認されたタイトルは、大量陳列・販売の機会が得られるという、段階的なマーケティングが可能になるのです。
今回の取次委託流通への乗り入れにより、NextPublishingは「電子書籍流通」「POD書籍流通」「取次委託流通」の3つの書籍流通を統合利用することができるようになりました。
読者に見える変化としては、たとえばアマゾンの本の商品ページを見ると、「Kindle版(電子書籍)」「オンデマンド(POD)」「単行本(取次書籍)」というそれぞれに価格が異なる3つの商品がリストされることになります。早く安く買いたい場合は電子書籍がいいでしょう。紙で読みたい方はPODか単行本を選ぶことになります。おそらく単行本のほうが安価なので、単行本があるならそれを買うのが得策です。ただし、取次版はその構造上、品切れしてしまうことがあります。その場合は、PODをご利用していただけばと思います。PODは品切れがなく、いつでも購入できます。
いかがでしょうか。次世代型出版モデルができたと思うのですが。
■取次委託流通のプレスリリース
http://www.impressrd.jp/news/160125/NP
インプレスR&D発行人/OnDeck編集長 井芹昌信
※この連載が書籍になりました。『赤鉛筆とキーボード』