POD(プリント・オンデマンド)でのカラー印刷はこれまでもできていたのですが、コストが高いのと、ストア設置型POD(ストアにて読者の注文により印刷して出荷する方式)では、まだモノクロが主流でした。
しかし、いよいよカラーの時代が始まりそうです。ストア設置型PODで先頭を走るアマゾンが、年内にもカラー対応を開始するとのことです。これは朗報です。市場リーダーのアマゾンが対応することで、POD出版のカラー化にはずみがつくことになるでしょう。すでにカラー対応しているDNPグループのウェブの書斎やhonto.jpでは、最近、写真集などを中心にカラーものも人気が出てきたそうです。
コストの問題も、最近はだいぶ改善されてきました。4年前は、ページ単価がモノクロに比べて4倍くらいかかったのですが、いまでは3倍以下まで下がってきています。もちろん、オフセット印刷や輪転機などの大量印刷での単価には及びませんが、製品企画しだいでは利用できる範囲に入ってきたと言えるでしょう。
印刷品質を心配する声もありましたが、最新鋭のマシンでは6色印刷すら可能になっており、品質に対する要求が厳しい広告ページにも対応できるレベルにあると聞いています。
後は使い方の問題だと思います。みんなで沢山使えば、それだけ市場が大きくなり、それに連れて単価もさらに下がっていきます。作り手側からすれば、製品企画の腕の見せ所ではないでしょうか。
PODのカラーは、その機械特性上、従来のオフセット印刷とは指定方法も違ってきます。オフセット印刷では、「台」と呼ばれるページ単位(16ページなど)で管理されており、カラーなどの印刷方式の変更は台単位でしか行うことができませんでした。たとえば、先頭から16ページはカラーにして、それ以降はモノクロにする、などです。この場合、実際は10ページしかカラーを使わなかったとしても、16ページ分のカラー代金がかかります。
一方、PODの場合は台という概念はなく、パソコンのプリンターと同じようにページ単位で管理できます。そのため、台を気にすることなく必要なページだけをカラー指定することが可能です。
オフセット印刷でのカラー指定は、見ての通りに専門知識を要求するので、その発注は技量を持った編集者や印刷関係の人が行う必要があったわけです。しかし、PODのカラーになることでこの問題も解消し、より多くの人が利用できるようになることでしょう。ただ、逆に言えば、編集者のアドバンテージがまた1つ無くなる出来事でもあります。
どちらにしても、パソコンなどで作ったPDFファイルで、ページ単位でカラー指定ができるようになるわけで、本というメディアがまた一歩前進したことは間違いありません。積極的に使って、これまでできなかったような製品を作り出していきたいものです。
インプレスR&D発行人/OnDeck編集長 井芹昌信