私が、『僕が伝えたかったこと、古川享のパソコン秘史』(古川享著、インプレスR&D刊)という本を編集していたことは前にお伝えしましたが、この本はパソコン業界の歴史を扱ったものだったので、調べもの、素材集めや査読などの作業が大変でした。この編集過程で「facebook」が大活躍してくれたので、その報告をしたいと思います。facebookと出版の連携プレイは、今後のデジタル編集の1つの方向を示唆しているかもしれません。
今回の本の出版では、以下のような様々な場面でfacebookを使いました。
■著者との打ち合わせ(メッセージ機能)
超多忙な著者でしたがfacebookはよく利用されていたので、メールや電話よりfacebookのメッセージのチャット機能での打ち合わせのほうが効率的でした。
■関係者での情報共有(グループ機能)
今回は特設編集チームとして7人が参画していたので、facebookグループを新設し、そこで情報交換を行いました。
■査読(メッセージ&添付機能)
今回は歴史情報をできるだけ真実に近づけるために、30人くらいの方々に査読をお願いしました。メールアドレスが分からなかった人がfacebookで見つかったり、その方々にはメッセージの添付機能で原稿を送ったりしました。
■写真探し(ニュース&シェア機能)
どうしても見つからない写真素材を、私と著者である古川さんのfacebookの「友達」にニュース機能を使って捜索依頼したところ、皆さんに「シェア」して頂き、見事に見つけることができました。
■宣伝・販促(ニュース&シェア機能)
本の発行日には、そのお知らせと購入のお願いをしたところ、66ものシェアをして頂き、その日のアマゾンkindle総合ランキングの4位を獲得できました。
■アフターケア(グループ機能)
著者の意思で、「本の内容についての見解の違いや新情報があったら、SNSなどの支援で情報を集め、改修していきたい」という主旨が、本の「はじめに」に記載されていました。そこでfacebookのグループを使って、読者による情報交換のためのコミュニティを作りました。
現在、発売後2週間経ったところですが、すでに30人以上の方々が参加してくれています。そこでは、読後の感想や、古川さんを含めて、本では掲載されていない新たな歴史情報が書き込まれたりしています。これらの情報を追加した改訂版が出せたらいいと思っています。もしかしたら、続編の企画につながるかもしれません。
以上のように、Facebookはコミュニケーション機能が優れており、独自のコミュニティも形成することができ、今回のニーズにはうってつけでした。
フローメディア(新しい情報が流れていくメディア)の代表であるfacebookと、ストックメディア(情報が蓄積されるメディア)の代表である書籍出版。この両者はメディア特性としては両極端だと言えますが、それゆえ連携すればお互いの弱点を補うことができ、強みを強化することができると感じました。
次の改訂や続編の出版では、facebookが主導して、その結果を編集して出版するという順序になるのかもしれません。出版の立場から見れば、facebookが企画や素材集めのプロセスのプラットフォーム役をかってくれたことになり、出版がより濃いものになったと解釈できます。この連携は、今後のデジタル編集、電子出版に使えるモデルではないでしょうか。
『僕が伝えたかったこと、古川享のパソコン秘史』紹介ページ
http://nextpublishing.jp/book/6916.html
インプレスR&D発行人/OnDeck編集長 井芹昌信
(次回は1月14日の掲載予定です)
※この連載が書籍になりました。『赤鉛筆とキーボード』