いま、訳あって、久しぶりにある本の編集実務を自分で担当しています。最後に担当した22年前は、まだデジカメもインターネットもない時代でした。今回、実際に編集作業をしてみて、いま我々を取り巻いているデジタルパワーの凄さを実感しました。
ある本とは、古川享さん(元マイクロソフト株式会社 社長)によるパソコンの歴史についての書籍です。そのため、30~40年前のパソコン業界に関する写真を集める必要がありました。
そこでまず、写真を持っていそうな知人にメールでお願いしました。それでも集まらないものがあったので、今度はfacebookの「友達」に公開捜索で願いしました。私のfacebookの「友達」は400人程度ですが、すぐに反響があり、探していたもののほとんどが見つかったのです。当時は、デジカメはなかったので写真は紙焼きの状態だと思われますが、皆さん、スキャナーでデジタル化またはデジカメで撮ってメールに添付して送ってくれました。
後は、フォトレタッチソフト(と言ってもWindows標準の「Microsoft Office」)でトリミングして、ワープロに張り付けて、サイズ調整して終わりです。うちのNextPublishingシステムは、それを数分でEPUBとPDFに組み上げてくれるので、組版結果をすぐ確認することができます。
今朝も1枚届いたのですが、この原稿を書く前に処理しておきました。この圧倒的なスピード感は、デジタルだから成し得たことです。
22年前はどうやって作っていたかを思い出すと、メールの代わりに電話、紙焼きは郵送してもらって、それを制作会社に送って、スキャンしてもらいDTPソフトに貼り付け、プリントアウトが数日後に郵送で届くという感じでしょうか。たぶん1~2週間はかかったでしょう。
隔絶の感がありますね。我々の周りの環境は本当にデジタル化されていました。電子出版を「紙ではなく画面で読む出版」と捉えている人が多いと思いますが、電子出版が劇的な効果を発揮するのは編集作業工程に適用した時だと言うことを、改めて実証できました。
付け加えると、facebookは関係者との情報交換にも頻繁に利用しました。リアルタイムでのチャットや電話はとても便利でした。いまやfacebookは編集ツールと位置付けていいと思います。
インプレスR&D発行人/OnDeck編集長 井芹昌信
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※この連載が書籍になりました。:http://www.amazon.co.jp/dp/B017WZ08RK