Quantcast
Channel: 電子メディア雑感 – OnDeck
Viewing all articles
Browse latest Browse all 34

[編集長コラム]戦争とインターネット

$
0
0

大変悲しいことに、フランスで同時多発テロが起き、戦争状態が宣言されました。

 

1994年に発行したインターネットマガジン創刊号で、インターネット接続世界地図を掲載しました。当時それを見て、インターネットにつながっていない国に戦争が多いことに気づき、インターネットが普及すれば戦争がなくなるのではないかと期待しました。

それは、コミュニケーションが安価に世界規模で行われれば、どの国にも知り合いが増え、知り合いが居る国に戦争をしかけることはなくなると思ったからでした。「グローバルビレッジ」のような状態です。グローバルビレッジ(地球村)とは、メディア研究者のマーシャル・マクルーハンが唱えた概念で、電子ネットワークによって情報がどこでも簡単に入手でき、世界は1つの村のような状態になるという提言です。

 

あれから21年が経ちましたが、戦争は増えこそすれ、減る気配を感じません。私の予感ははずれ、インターネットは戦争には機能しなかったように見えます。

しかし、インターネット接続は世界を覆い、開発途上国や貧しい国でも世界中に発信できるように普及してきています。インターネットはプアマンズメディアという側面があり、かつては伝わりにくかった中東などの情報もYouTubeなどで伝わるようになってきています。今回のテロの首謀者とされているISISもインターネットを上手に利用しています。見る限り、インターネットによる情報発信は機能しているようです。問題は情報共有にまで至っていない点にあるのかも知れません。

別の見方もできるでしょう。映像による伝達は機能しているが、文字や音声による伝達は言語の壁に阻まれて機能していないという面です。つまり、見て分かるような「おおまか」なことは共有できるが、その詳細や背景や思想のようなものは共有できていないのかも知れません。言語の壁は、国の壁または民族の壁と近いものなので、たとえば欧米と中東の間にはそれが大きく横たわっていると思えます。

その点では、完全な自動翻訳システムが開発されれば課題が解消するのかも知れません。いま開発が加速している人工知能がさらに進化すれば、それも夢ではないと思われます。いやしかし、それも早計なのでしょう。

 

マクルーハンは「メディアは人間を拡張するツールである」とも言っています。ツールは、機能拡張はしてくれますが、ツールが問題を解決してくれるわけではありません。それを使う人間の質が悪ければ悪いなりに拡張され、よければよいなりに拡張されると考えるのが筋なのでしょう。

「インターネットは民主主義のトレーニングコースだ」と言ったジャーナリストがいました。つながった上で、話し合い、理解し合い、学び合い、使い手である人間自身がもう一段賢くならないと、戦争はなくならないのかも知れません。

 

インプレスR&D発行人/OnDeck編集長 井芹昌信

(次回の掲載は、12月3日の予定です)


Viewing all articles
Browse latest Browse all 34

Trending Articles