前回の熊本地震の緊急報告に大きな反響を頂きましたので、今回も引き続き私が体験したことを、記憶が鮮明なうちにお伝えしておきたいと思います。本コラムの主旨からは脱線しますが、いまや日本中の皆さんに関心があることだと思いました。教訓も書きましたので、ぜひ最後までお読みください。
私が体験したのは、益城町での16日未明の震度7以降の地震です。益城町の震度計はこの大地震で壊れたそうで、後に震度7と訂正されました。
私はベッドに寝ていたのですが、それは突然大きな音で始まり、起こされました。家が激しくきしみ、身体がベッドの上を大きく行き来しました。「揺れ」というよりは、ものすごい力で引きずられて、反転、また引きずられて、反転、・・・、という感じで、家全体が何か大きなものに揺さぶられているようでした。
そしてこの揺さぶりは、信じられないことに1回ではなく、いつ終わるのかと思うくらい長く続きました。20分までは時計を見たので覚えているのですが、おそらく1時間くらいは続いていたように思います。震度3~4くらいがずっと続き、時に大きなのが来る感じです。ベッドに寝ていたのでよかったのですが、もし立っていたら、飛ばされたか、飛んできた物で怪我したのではないかと思います。
この写真は居間の状況ですが、テーブルが上下逆さまになってしまっています。実は前震後は横倒しだったのですが、本震でこのありさまです。「机の下に隠れろ」は、震度7では甘いということのようです。
ただ、奥にあるテレビは倒れていません。ほかの部屋のもう1台のテレビも下の台は倒れたのですが、テレビは台に固定されたままでした。テレビの固定は震度7でも有効ということです。もしテレビを固定されていない方は、今日にでも固定してください。
この部屋は、すべてのものが倒れて、それがさらにかき混ぜられたような状況で、入ることができませんでした。つっぱり棒なども役に立たなかったと思われます。
これは台所です。右側はフローリングだったのですが、棚が落ち、床は割れた食器が10cmほど積もっていました。靴がないと歩けません。
外に出てみると、家の周りには大量の瓦が散乱。家から5mくらいまで飛んでおり、中には地面に刺さって抜けないものもありました。地震の最中に不用意に外に出るのは危険だ、いうことが分かります。
結局、私は部屋から出ないで、最後は寝てしまったのですが(1回、外の様子を見に出た)、朝、周りを見渡してみて、改めて恐ろしくなりました。大きな窓サッシは外れて、部屋に倒れ込んでおり、私の寝ていたベッドをかすめていました。外に出て様子を見てみると、写真のように言葉を失うようなありさまだったのです。
いま思えば、外に避難したほうがよかったように思います。最後まで耐えてくれた実家の我が家に感謝です。
今回の地震は、直下型で、局所的で、前震型で、何度も起こった(震度6が5回、震度7が2回)、という過去に例のないタイプだったとのことなので、これまでの常識が通用しなかったようです。「机の下に隠れろ」や「つっぱり棒」などは盤石じゃなかったわけですが、普通の地震なら意味はあると思います。やらないよりやったほうがいいでしょう。ただ、大きな地震だとそれも限定的で、過信は禁物というのが今回の教訓のように思います。
はっきり言えることは、
- テレビは固定する
- 高いところに重い物を置かない
- 寝床のそばに、靴と懐中電灯を置いておく
- 大きな窓サッシは倒れ込むことを認識しておく
- 外に出る動線を確認しておく
- すきを見て外の広いところに避難する(家の状況によるが)
- 外に出るときは落下物に注意する
- そして、日本は地震と共に生きていかなければならない国だということを思い出す
だと思いました。皆さんの今後の参考になれば幸いです。
前回のコラム:緊急報告:熊本地震に遭遇、現地でのメディア利用の状況は?
http://on-deck.jp/archives/20153938
インプレスR&D発行人/OnDeck編集長 井芹昌信
※この連載が書籍になりました。『赤鉛筆とキーボード』